レザーフェイス 悪魔のいけにえ
原題/Leatherface
公開/2018
前作「飛び出す!悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲」(タイトルこれで合ってる)から早5年。
現在公開中でレザーフェイスがレザーフェイスに至る経緯を描く本作。
見てきたので紹介します。
ホラーファンなら1人でも、同じくファンの友人と見るのはオススメだが恋人と見るのはオススメできない。
昨年この世を去った元祖「悪魔のいけにえ」生みの親トビー・フーパー生涯最後のプロデュース作品。
説明不要かもしれないが知らない人のために「悪魔のいけにえ」シリーズを一応おさらいしておく。
「悪魔のいけにえ」は1974年のアメリカ映画。
若者5人が車でテキサスを走行中、とあるヒッチハイカーを拾ったことから人皮の仮面を被ったレザーフェイスとその家族に襲われることになる。
原題は「The Texas Chain Saw Massacre」
「テキサス 電動のこぎり大虐殺」である。
(余談だが初代レザーフェイス役のガンナー・ハンセンは後に「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」に出演している。読み方はマサカーで合っている。)
その滲み出る強烈な不快感と恐ろしさ、そして後のホラー映画に多大なる影響を与えたことからマスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されることとなった。
ホラー映画としてはこれ以外には「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のみ。
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッドの紹介↓「http://dehix.hatenablog.com/entry/2016/10/14/233044
いわゆる"殺人鬼モノ"としては「ハロウィン」よりも「13日の金曜日」よりも「エルム街の悪夢」よりも先輩。"食人モノ"としては「サランドラ」や「食人族」よりも、さらにホラー映画としても「エイリアン」や「チャイルド・プレイ」よりも先輩。
実はホラー映画黄金期の80年代よりずっと前の作品なのだ。
今回の「レザーフェイス 悪魔のいけにえ」は実に8作目。
ホラー映画の側面よりはレザーフェイスになるに至った経緯にフォーカスした作品となっている。
あらすじ
5歳の誕生日プレゼントにチェーンソーをもらった少年。
彼はとある事件がきっかけで更生施設に送られてしまい、生まれ変わるために名前も変えられてしまった。
少年はある日、騒動に乗じて施設長を殺害し逃走。
逃避行の中、さまざまな困難の果てに彼の心境に変化が訪れる。
今や伝説となったレザーフェイスはいかにして生まれたのかが暴かれる…
実は6作目の「テキサス・チェーンソー ビギニング」でもレザーフェイスとこババ・ソーヤー誕生の話が描かれているがこちらは文字通り誕生、つまり"出生"の秘密が明かされている。
くどいようだが今回はあくまで"レザーフェイス"という"存在"が生まれた話である。
実はこのシリーズは何度もパラレルワールド化しており、ファンとしてはレザーフェイス何人目だよとツッコミたくなるところだがそこはぐっと我慢。
ホラーファンなんてもはや見るのが義務化している。
R18指定だがそこまでドギツいシーンはないのでそれが目当てで見に行った人には少し物足りないかもしれない。
むしろ今回は最後の展開が見ものなので89分でさっくりと終わった方がよかったのかもしれない。
今作は絶対に「悪魔のいけにえ」シリーズを全て見終えてから鑑賞してほしい。
劇場で見たい人は大急ぎでレンタルビデオ屋に行こう!
今までのシリーズといえば、1作目は不快感を追究し、2作目はトビー・フーパーが監督だが本人も前作を超えられないと悟り、コメディよりの作品となった。
3作目以降は監督もまちまちだが特に言うことはない凡作になっている。
だが今回は新たな試みが見えた。
それは"叙述トリック"である。
おっとここから先はネタバレ注意だ!
今後このシリーズを見ようと思ってる人は見ないように!
ネタバレあらすじ
新米看護師リジーは希望して更生施設に着任。
そこでロン毛の巨漢青年、バドと出会う。彼は統合失調症だったが、問題児アイザックに絡まれるリジーを体を張って守るなど心優しい一面も見せる。
また、バドの良き理解者であるジャクソンともいい感じになる。
ある日、ソーヤー家の母親が息子を返せと施設を訪ねてきた。しかし断られてしまい、トイレに篭って騒動を起こす。
母親の狙い通り、施設は混乱。
多くの収容者が逃げ出してしまう。
問題児のアイザックは恋人であるクラリスとともにバド、ジャクソン、リジーを人質に取りながら逃亡を続ける。
しかし横暴なアイザックはバドの怒りを買い、殺されてしまう。クラリスもまた追ってきた警察に銃殺されてしまう。
迫ってきた警察だがバドは勇敢にも2人を守るために警官に立ち向かう。
だが健闘むなしく弾丸はバドの頭部を貫き、彼は息絶えてしまうのであった…
え?
レザーフェイス死んだ……?
そう、ここがトリックなのだ。
映画を最初から見ていると明らかにバドが中心に描かれており、彼がレザーフェイスなのだと思い込んでしまう。
しかもこのトリックは「悪魔のいけにえ」シリーズを見ている人ほど引っかかってしまう。
その理由はいくつもある。
①容姿
前述の通り、バドはロン毛で巨漢。
まさにレザーフェイスそのものである。
その見た目からまず彼がレザーフェイスだと思ってしまうのである。
②無口
全前作ではレザーフェイスは鳴き声のようなものは発するが喋ったことはない。
バドも統合失調症のため、セリフは「ジャクソン」の一言のみ。
ファンからするとレザーフェイスは喋らなくて当たり前なのだ。
③暴力前科あり
施設には時折、養子を迎える夫婦がいるようでバドも過去に一度施設から出たことがある。しかしおもちゃを取り上げられたことから夫婦を意識不明になるまで殴り続けたことが作中で明かされている。
また、施設から逃走する際もわざわざ施設長室に赴き、施設長を殺している。
この頃からレザーフェイスの片鱗を見せている…と視聴者に思わせるのが狙いだ。
④タフ
施設から虐待を受けてもアイザックに暴力を振るわれても銃で腹を撃たれてもなんのその。
ホラー映画では「やっつけたぞ!」と思ってもやっつけてないことが多い。
結果的にレザーフェイスなどの殺人鬼は"タフ"なのだ。
⑤美人好き
レザーフェイスは捕まえた女の子が好みだとすぐには殺さず、会話を楽しんだり(?)社交ダンスを一緒に踊ったりする。
命乞いをすると一瞬躊躇したりと意外と女たらしなのである。
バドも美人看護師リジーを身を呈して守ったりしていたことから彼をレザーフェイスと間違えても致し方ないことである。
⑥ポスター
先ほどから貼っているこの画像、実はポスターになっている。
レザーフェイスの映画のポスターなのだからレザーフェイスが写っているに決まっている。
そう無意識に思ってしまうのが人間である。
誰もこれがレザーフェイスじゃないなんて思わないだろう。
これは配給会社の広報部が有能だったに他ならない。
集客のために公開前から犯人が妻◯木聡だと明かす日本とはエラい違いだ。
これらの理由からバドがレザーフェイスであることは疑う余地がないのである。
だからバドが頭を撃たれるシーンは心底驚いた。
ちなみに友人と見に行ったのだが友人はまだこの時点では頭が混乱しており、「頭撃たれても死なないなんて流石レザーフェイス。タフや。」などと訳の分からないことを供述しており……
ということで本作は展開にびっくり、この手のホラー映画でこの手法にびっくりな2度びっくりする作品なのである。
見る前に読んでしまった人は残念。
違う作品でびっくりを味わおう。
ちなみにラストは近年のホラーの流行りなのか、ちゃんとバッドエンド(見ようによってはハッピーエンド)で締めてくれる。
兎にも角にもファンにとってはいい意味で裏切られる作品だ。
グロ★★★☆☆
怖さ★☆☆☆☆
驚き★★★★☆
家族愛★★☆☆☆
総合評価/75点